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農園型とサテライトオフィス型の違い|公表資料で比較して選ぶ

この記事の立場について

農園型とサテライトオフィス型を比較した記事の多くは、 どちらか一方の方式を提供している事業者が書いています。 そのため、自社の方式に有利な結論に寄りやすい構造があります。

本サイトはいずれの事業者にも属していません。 この記事では、両方式の仕組みを並べたうえで、 批判されている論点と、行政が実際に何を確認し何を示したのかを、 一次情報にもとづいて整理します。

共通している点:どちらも「雇用主は利用企業」

まず、両方式に共通する最も重要な点を確認します。

サービス事業者は雇用主ではありません

農園型・サテライトオフィス型のいずれも、障害者を雇用するのは利用企業自身です。サービス事業者は、就業場所・設備・支援スタッフを提供する立場です。

したがって、給与の支払い、社会保険の適用、労務管理の責任は、すべて利用企業が負います。この点は方式による違いがありません。

雇用した障害者は利用企業の従業員として、自社の実雇用率に算入されます。 カウントの方法(短時間労働者の0.5カウント、重度のダブルカウントなど)も 通常の雇用と同じ扱いです。

仕組みの違い

比較項目 農園型 サテライトオフィス型
就業場所 事業者が運営する屋内農園・ビニールハウスなど 事業者が用意した専用オフィス
主な業務 野菜やハーブなどの栽培・収穫・出荷準備 事務作業、データ入力、軽作業など
収穫物・成果物 利用企業に納品され、社内で消費・配布されることが多い 利用企業の実業務を切り出して担当する場合がある
立地 郊外に立地することが多い 都市部の駅前などに立地することが多い
想定される障害特性 身体を動かす作業に適性がある方 PC作業や事務作業に適性がある方
天候の影響 屋内型が主流のため受けにくいが、作業内容は季節性がある 受けない

それぞれの利点

農園型の利点

  • 作業内容が明確で、業務を新たに切り出す必要がない。 「任せる仕事がない」という課題を抱える企業でも導入しやすい構造です。
  • 育てる・収穫するという工程が目に見えるため、達成感が得られやすいとされます。
  • 収穫物が社内に届くことで、本社の従業員が雇用の存在を実感しやすくなります。

サテライトオフィス型の利点

  • 自社の実業務を切り出して任せられる可能性がある。 業務を設計できれば、本業への直接的な貢献につながります。
  • PC作業のスキルが蓄積されるため、キャリアの発展余地があります。
  • 都市部に立地することが多く、通勤しやすい場合があります。

批判されている論点

両方式は、まとめて「障害者雇用代行ビジネス」と呼ばれ、 次のような批判を受けてきました。

  1. 雇用率の達成だけが目的化しているのではないか — 本社の業務と切り離された場所で、本業と関係のない作業をすることが、 障害者雇用促進法が想定する「共生社会の実現」に沿うのか、という指摘です。
  2. 利用企業が雇用管理の実質を担っていないのではないか — 日常の管理をサービス事業者に委ねることで、 雇用主としての責任が形骸化するのではないか、という指摘です。
  3. キャリア形成につながらないのではないか — 業務が固定的で、職業能力の向上や処遇の改善につながりにくいのではないか、 という指摘です。

これらは農園型に対してより強く向けられてきましたが、 論点そのものは「本社から離れた場所での就業」という構造に由来するため、 サテライトオフィス型にも共通します。

行政は何を確認し、何を示したか

厚生労働省は、農園やサテライトオフィスなどの就業場所を提供する いわゆる「障害者雇用ビジネス」について実態把握を行い、その結果を公表しています。

調査の規模

事業者46社が運営する就業場所221か所を把握し、そのうち87か所を訪問。 利用企業82社についても、労働局等による事業所訪問等を通じた実態把握が行われました。

調査の結論

結論は「違法ではないが、留意事項がある」

この調査では、明らかに法令に反する事例は確認されていません。一方で、障害者雇用促進法の趣旨に照らして疑義が残る事例がある一方、能力開発・向上につながる事例もみられた、とされています。

つまり、「違法だからやめるべき」でも「問題がないから安心」でもない、 という位置づけです。利用の仕方によって評価が変わるというのが行政の見方です。

示された3つの留意事項

利用企業に対しては、次の点への留意が示されています。

留意事項 内容
最低賃金の取り扱い 本社から離れた場所を就業場所とする場合、最低賃金の取り扱いに注意が必要
無期転換ルール 無期転換申込権が発生する前に雇止めをすることは、労働契約法の趣旨に照らして望ましくない。有期契約の満了前に使用者が更新年限や回数の上限を一方的に設けても、雇止めが合理的な理由を欠くものとして無効とされる場合がある
雇用管理責任 本社から離れた就業場所においても、利用企業が雇用主としての雇用管理責任を十分に果たすため、業務管理体制の確保や、個々人の特性を踏まえた支援担当者の配置に留意すること

いずれも、サービス事業者ではなく利用企業側の責任についての指摘である点が重要です。 サービスを利用しても、雇用主としての責任を外部に移すことはできません。

どちらを選ぶかの判断軸

方式そのものに優劣があるわけではありません。 次の順序で考えると、自社に合う方を絞り込めます。

1. 自社に切り出せる業務があるか

社内に、まとまった量の定型的な事務作業やデータ処理があるなら、 サテライトオフィス型で自社業務を担当してもらう構成が検討できます。

切り出せる業務が見つからない、あるいは業務設計に割ける人員がいない場合は、 作業内容があらかじめ用意されている農園型のほうが立ち上げやすくなります。

2. 雇用管理をどこまで自社で担えるか

どちらの方式でも、雇用管理責任は利用企業にあります。 本社側に担当者を置けるか、定期的に就業場所を訪問できるか、 評価と処遇の仕組みを自社で運用できるかを確認してください。

この体制を用意できないまま導入すると、行政が指摘している論点に直面します。

3. 実際のサービスを並べて見る

方式を決めたら、その方式を提供している事業者を具体的に比較する段階になります。 各社の公式サイトで確認できた事実(運営会社の法人情報・対応エリア・公表実績・料金の公開状況)は、 障害者雇用支援サービス比較一覧にまとめています。

なお、農園型とサテライトオフィス型の両方を提供している事業者もあります。 方式を決めきれない場合は、両方を扱う事業者に相談する方法もあります。

4. 採用したい方の適性

PC作業に適性がある方を採用したいのか、 身体を動かす作業のほうが力を発揮できる方を想定しているのかによって、 適した方式は変わります。

この記事のまとめ

  • 農園型・サテライトオフィス型のいずれも、雇用主は利用企業であり、責任は移らない
  • 厚生労働省の実態把握では、明らかな法令違反は確認されていないが、 疑義が残る事例と能力開発につながる事例の両方がみられている
  • 示された留意事項(最低賃金・無期転換・雇用管理責任)は、いずれも利用企業側の責任
  • 選択の分かれ目は「切り出せる業務があるか」と「雇用管理を自社で担えるか」
  • 方式そのものの優劣ではなく、自社の体制と運用の仕方で評価が決まる

出典

本ページの制度に関する記述は、以下の公的機関の資料を確認したうえで作成しています。 制度は改正されることがあるため、実務判断の際は必ず出典元の最新の内容をご確認ください。

  1. いわゆる障害者雇用ビジネスに係る実態把握の取組について(厚生労働省/確認日:2026年9月1日)
  2. 障害者が活躍できる職場環境の整備に向けた留意事項(厚生労働省/確認日:2026年9月1日)
  3. 障害者雇用率制度(はじめての障害者雇用~事業主のためのQ&A~ 7.資料編)(独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)/確認日:2026年9月1日)