障害者雇用で使える助成金|中小企業のほうが2倍以上もらえる
結論:助成金は中小企業のほうが手厚く設計されています
障害者雇用の助成金は「大企業向けの制度」と思われがちですが、実際は逆です。
代表的な特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)では、 中小企業の支給総額が中小企業以外の2倍以上に設定されています。身体・知的・精神障害者の区分は、雇入れ日現在の満年齢が原則65歳未満です(支給要領0201イ・0202ロ〜ニ。ただし0901イの就職促進手当等支給対象者を除きます)。65歳以上の場合は高年齢者区分に該当する可能性もあるため、採用前にハローワーク等で対象区分と要件を確認してください。
| 対象労働者 | 働き方 | 中小企業 | 中小企業の支給対象期ごとの額 | 中小企業以外 |
|---|---|---|---|---|
| 重度障害者等を除く身体・知的障害者 | 短時間労働者以外 | 120万円(2年) | 30万円 × 4期 | 50万円(1年) |
| 重度障害者等 | 短時間労働者以外 | 240万円(3年) | 40万円 × 6期 | 100万円(1年6か月) |
| 重度障害者等を含む身体・知的・精神障害者 | 短時間労働者 | 80万円(2年) | 20万円 × 4期 | 30万円(1年) |
★「重度障害者等」に精神障害者が含まれます
厚生労働省の支給額表には、次の定義(※3)が付いています。
「重度障害者等」とは、重度の身体・知的障害者、45歳以上の身体・知的障害者及び精神障害者をいいます。
つまり短時間労働者以外(週30時間以上)の精神障害者は、「重度障害者等」の区分にあたり、中小企業なら240万円(3年)が上限です。表の1行目や3行目ではありません。
表の見出しだけを読むと、精神障害者は3行目(短時間労働者・80万円)にしか出てこないため、フルタイムで精神障害者を雇う場合に「対象外」または「80万円」と読み違えやすくなっています。差は160万円です。45歳以上の身体・知的障害者も同じ区分です。
なお表の「短時間労働者」には、次の定義(※4)が付いています。
「短時間労働者」とは、一週間の所定労働時間が、20時間以上30時間未満である者をいいます。
週20時間未満の場合はこの助成金の対象区分に当たりません。週25時間の方は「短時間労働者」の行、週35時間の方は「短時間労働者以外」の行で読んでください。
この金額は上限です。払った賃金を超えては受け取れません
厚生労働省は「ただし、支給対象期ごとの支給額は、支給対象期に対象労働者が行った労働に対して支払った賃金額を上限とします」としています。表の金額は「最大でここまで」を示すもので、受け取れる額を約束するものではありません。
上限は支給対象期ごとに判定されます。表の期数から分かるとおり、支給対象期は6か月単位です(2年=4期、3年=6期)。中小企業が重度障害者等を雇い入れた場合の240万円は、6か月ごとに40万円が上限という意味で、年単位や総額で判定するものではありません。
その6か月間に支払った賃金が40万円に満たなければ、その期の支給額は賃金額までに収まります。短時間勤務の方や、賃金がこれを下回る場合はとくに影響します。資金繰りの計画は、満額ではなく実際に支払う賃金を基準に立ててください。
助成対象期間も中小企業のほうが長く設定されています。 「うちのような規模では使えないだろう」という前提で調べていない企業が少なくありませんが、 規模が小さいほうが有利な制度です。
★申請前に必ず知るべきこと
採用してから知っても間に合いません
特定求職者雇用開発助成金の主な支給要件は、厚生労働省のページに次の2つとして示されています。
(1) ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等(※1)の紹介により雇い入れること
(2) 雇用保険一般被保険者又は高年齢被保険者として雇い入れ、継続して雇用すること(※2)が確実であると認められること。
(1) が採用経路の話です。自社で直接募集して採用した場合、この要件を満たさず対象外になります(支給要領 0201イ は、ハローワーク等がこの助成金の対象労働者として明示した職業紹介による雇入れを求めています)。厚生労働省の事業主向けQ&A(問5)は「ハローワークのオンライン自主応募の場合も助成対象となりません」としています。応募を受けたあとや選考を始めたあとに紹介を受けても対象外です(事業主向けQ&A 問6、支給要領 0205イ)。民間の職業紹介事業者は、雇用関係給付金の取扱いに係る同意書を提出している事業者に限られます(厚生労働省の案内ページの※1、事業主向けQ&A 問5)。採用活動を始める前に、どの経路で採用するかを決めておく必要があります。身体・知的・精神障害者の区分は雇入れ日現在の満年齢が原則65歳未満です(支給要領0901イの就職促進手当等支給対象者を除く)。
(2) には2つの条件が入っています。1つは雇用保険。週の所定労働時間が20時間未満の場合、原則として雇用保険の被保険者になりません。実雇用率のカウントでは週10時間以上20時間未満の特定短時間労働者も算定できますが、その働き方ではこの助成金の要件を満たさないという関係になります。カウントと助成金は別の制度です。
★もう1つが「(※2)」です。雇い続ける条件が入っています
(2) の「継続して雇用すること(※2)」の中身は、案内ページの注記にこうあります。
対象労働者の年齢が65歳以上に達するまで継続して雇用し、かつ、当該雇用期間が継続して2年以上であることをいいます。
有期で雇う場合は、雇用契約書に「自動更新」(本人が望む限り更新できること)と明記した契約であることが条件です(同じ案内ページのお知らせ・令和5年10月1日から)。契約期間の長さでは決まらず、2〜3年の契約でも自動更新でなければ対象外です。また同じお知らせは「雇用契約書に自動更新と記載されている場合であっても、更新の条件として就業規則の解雇要件を超えるものが付されている場合は助成対象となりません」としています。採用経路と労働時間だけを整えても、雇用契約の形で外れます。
そして「重度障害者等」(短時間労働者以外)は、企業規模にかかわらず3年以上です。厚生労働省の支給要領 0201イ は、継続雇用をこう定義しています。
正規雇用又は無期雇用、若しくは有期雇用であっても対象労働者が望む限り更新することができ、対象労働者の年齢が65歳以上に達するまで継続して雇用し、かつ、当該雇用期間が継続して2年以上(ただし0204イ(ハ)の者にあっては3年以上)であることをいう。
この 0204イ(ハ) が「重度障害者等」(短時間労働者以外の区分)です。
短時間労働者以外の精神障害者は、この「重度障害者等」の区分です。240万円を見込むなら、3年以上の継続雇用が前提になります。
これは助成金で最も多い取りこぼしのパターンです。 「良い人が見つかったから採用した」あとで助成金を調べ始めると、 要件を満たさない経路だったという結末になりかねません。
採用経路を決める前に、この記事を読んでいるなら間に合います。
使える助成金の全体像
障害者雇用に関する助成金は、窓口が分かれています。 ここを取り違えると手続きが進まないため、まず整理します。
| 助成金 | 内容 | 相談・申請先 |
|---|---|---|
| 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース) | 障害者を継続雇用する労働者として雇い入れた場合(身体・知的・精神障害者の区分は雇入れ日現在の満年齢が原則65歳未満。ただし支給要領0901イの就職促進手当等支給対象者を除く) | 労働局・ハローワーク |
| 同(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース) | 発達障害者・難治性疾患患者を雇い入れた場合 | 労働局・ハローワーク |
| 障害者トライアルコース/障害者短時間トライアルコース | 試行的に雇い入れる場合。週20時間以上の勤務が難しい精神障害者・発達障害者を、20時間以上を目指して試行雇用する場合を含む | ハローワーク |
| キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース) | 有期雇用から正規雇用・無期雇用への転換、無期雇用から正規雇用への転換 | 労働局・ハローワーク |
| 障害者雇用納付金制度に基づく助成金 | 作業施設・福祉施設の設置整備、介助等の措置、通勤を容易にする措置など | JEED |
| 障害者雇用相談援助助成金 | 労働局の認定を受けた事業者が、雇用指導と一体で相談援助事業を実施した場合 | 事業者の認定は労働局/助成金の申請・相談はJEEDの都道府県支部 |
窓口はハローワークとJEEDに分かれます
「雇い入れ」に関する助成金はハローワーク・労働局、「職場環境の整備や介助」に関する助成金はJEEDが窓口です。両方を使いたい場合、申請先が別になります。
金額を公表していない助成金について
本記事の表で金額を示していない助成金は、 厚生労働省・JEEDのページに「費用の一部を助成」としか記載がなく、 具体的な金額が明示されていないものです。
これらについて、本サイトでは推測した金額を掲載していません。 実際の金額は、対象となる措置の内容や費用によって変わるため、 管轄の窓口にご確認ください。
助成金を前提にコストを考えるときの注意
助成金は後から支給されるものです。 採用時点では人件費が先に発生し、支給は支給対象期ごとに行われます。 資金繰りの計画では、この時間差を織り込む必要があります。
また、要件を満たさなかった場合や、対象労働者が早期に離職した場合には、 想定した額が支給されないこともあります。 納付金シミュレーターで雇用コストを試算する際、 助成金の額を過大に見積もると比較が歪みます。 確実でない場合は0として計算することをおすすめします。
申請の進め方
- 採用経路を決める前に、ハローワークの雇用指導部門に相談する どの助成金が使えるか、どの経路で採用すべきかが変わります
- 対象となる助成金の要件を確認する
- 必要に応じて計画届などを事前に提出する
- 採用後、支給対象期ごとに支給申請を行う
助成金の内容は年度によって変わります
本記事の金額と要件は、記事末尾の出典に記載した確認日時点のものです。助成金は年度ごとに見直されるため、実際の申請にあたっては必ず最新の情報をご確認ください。
また、支給要件は本記事に書ききれないほど細かく定められています。判断に迷う場合は、管轄の労働局・ハローワーク、またはJEEDの都道府県支部にご相談ください。
この記事のまとめ
- 助成金は中小企業のほうが手厚い(120万円 対 50万円、240万円 対 100万円)
- 「重度障害者等」には精神障害者と45歳以上の身体・知的障害者が含まれる。 短時間労働者以外の精神障害者は240万円の区分(雇入れ日現在の満年齢が原則65歳未満。ただし支給要領0901イの就職促進手当等支給対象者を除く)
- ただしこの金額は上限。支給額は、支給対象期(6か月)ごとに、 その期の労働に対して支払った賃金額が上限になる
- 厚生労働省が示す主な支給要件は2つ。ハローワーク等の紹介による雇入れと、雇用保険の被保険者としての雇入れ+継続雇用。対象となる障害者の年齢も確認する(身体・知的・精神障害者の区分は雇入れ日現在の満年齢が原則65歳未満。ただし支給要領0901イの就職促進手当等支給対象者を除く)
- 「継続して雇用(※2)」には雇い続ける条件が入っている。65歳到達まで、かつ継続して2年以上。 重度障害者等(240万円の区分)は3年以上。有期なら雇用契約書に「自動更新」の明記が要る(契約期間の長さでは決まらず、2〜3年でも自動更新でなければ対象外。自動更新と記載されている場合であっても、更新の条件として就業規則の解雇要件を超えるものが付されている場合は助成対象とならない)
- 決める前に確認するのは対象者の雇入れ日の年齢・採用経路・労働時間・雇用契約の形(無期か、有期なら自動更新の明記と、就業規則の解雇要件を超える更新の条件を付けないこと)の4つ
- 窓口は「雇い入れ=ハローワーク・労働局」「環境整備=JEED」に分かれる
- 金額が公表されていない助成金について、本サイトは推測額を載せない
- 助成金は後払い。資金繰りでは時間差を織り込む
- 内容は年度で変わるため、申請前に必ず最新情報を確認する
更新履歴
- 2026年10月15日助成金の一覧の表とまとめの年齢条件を、身体・知的・精神障害者の区分の条件と書いた
- 2026年10月15日特定短時間労働者を週10時間以上20時間未満と書き、重なっていた年齢条件の注記を短くした
- 2026年10月15日特定就職困難者コースの身体・知的・精神障害者の区分は、雇入れ日現在の満年齢が原則65歳未満であること(支給要領0201イ)を書き足し、2つの要件を厚生労働省のページどおり「主な支給要件」とした
- 2026年10月13日障害者雇用相談援助助成金の相談・申請先を、事業者の認定は労働局、助成金の申請・相談はJEEDの都道府県支部に分けた
出典
本ページの制度に関する記述は、以下の公的機関の資料を確認したうえで作成しています。 制度は改正されることがあるため、実務判断の際は必ず出典元の最新の内容をご確認ください。