精神障害者の職場定着率|公的調査の49.3%と、求人区分別の数字の読み方
49.3%は、調査対象となった精神障害者の1年定着率です
JEEDの障害者職業総合センターが2017年4月に公表した調査研究報告書No.137では、精神障害者の就職後1年時点の職場定着率が49.3%と報告されています。 対象は、2015年7月1日から8月31日までに、全国134所のハローワークの専門援助部門の紹介により就職した人です。 49.3%の集計対象は、就労継続支援A型を除いた一般企業への就職者のうち、精神障害者1,206人です(この調査では、発達障害は別の区分で集計されています)。
精神障害者の中でも、求人の区分によって結果が異なります
同じ報告書の図表1-8-1では、この1,206人を求人の区分で分け、次の定着率と人数を示しています。
| 就職した求人の区分 | 就職後3か月時点 | 就職後1年時点 | 人数 |
|---|---|---|---|
| 障害者求人 | 82.7% | 64.2% | 618人 |
| 一般求人・障害を開示 | 65.6% | 45.1% | 195人 |
| 一般求人・障害を非開示 | 51.9% | 27.7% | 393人 |
※ 調査研究報告書No.137(2017年4月公表)、図表1-8-1。 ハローワークの紹介で一般企業に就職した精神障害者の結果で、A型への就職者はこの表に含みません。
報告書は、Cox回帰分析の結果から、精神障害者では障害者求人による就職について、短期・長期の定着の促進が示唆されたと考察しています。 一方、この調査では、就職先企業が定着のための配慮や工夫を行っていたかどうかは把握していません。 そのため、求人区分ごとの数値の差を、採用の入口や特定の配慮を変えたときの効果と断定することはできません。
70.4%と49.3%は、集計の切り口が異なります
サマリーの図1にある障害者求人の1年定着率70.4%は、障害種別を合算した障害者求人での就職者1,923人の結果です。 図1全体はA型を含む5,015人ですが、A型求人の1,742人は障害者求人とは別の区分です。 49.3%は、A型を除く3つの求人区分を合算した精神障害者1,206人の結果です。 したがって、この二つの数値の差を、精神障害者を障害者求人で採用することの効果として示すことはできません。
受け入れ体制は、本人と職場の状況を確認して決めます
厚生労働省の合理的配慮指針では、雇入れ時までに労働者が障害者であることを把握している場合、雇入れ時までに職場で支障となる事情の有無を確認するとしています。 合理的配慮が必要な場合は本人と話し合い、その意向を尊重し、過重な負担にならない範囲で講ずる措置を検討して、決めた内容を本人に伝える手続が示されています。
指針の別表には、精神障害のある労働者への採用後の対応例として、次の内容などが挙げられています。
| 確認する事項 | 指針にある対応例 |
|---|---|
| 指導・相談の担当 | 業務指導や相談の担当者を定める。 |
| 業務の伝え方 | 優先順位や目標を明確にし、指示を一つずつ出す。 |
| 作業手順 | 分かりやすく手順を示したマニュアルを用意する。 |
| 通院・体調への対応 | 出退勤時刻・休暇・休憩について配慮する。 |
| 業務量 | 本人の状況を見ながら調整する。 |
これらは対応の例であり、全ての企業や全ての人に同じ措置を一律に当てはめるものではありません。 採用後も、必要に応じて定期的に、職場で支障となる事情の有無を確認するとされています。 なお、障害者である労働者からの相談に応じる窓口をあらかじめ定めて周知すること(担当者・部署を定める、外部の機関に委託するなど)は、指針の第6で事業主が講じなければならない措置とされています(厚生労働省のQ&A A4-5-2では、既存の相談窓口を活用してもよいとしています)。
職務の組み立てについて、JEEDは、能力向上に必要な時間を考慮し、職務内容や責任の幅を段階的に広げる「積み上げモデル」を紹介しています。 職務の整理は職務の切り出し方でも確認できます。
この調査の数値を自社の見込みにする前に
ここで示した定着率は、2017年に公表された、ハローワーク紹介で就職した人の調査結果です。 企業ごとの配慮や工夫の有無を把握していないため、64.2%をそのまま自社の定着見込みや達成目標として扱わないでください。
この記事のまとめ
- 49.3%は、この調査で一般企業に就職した精神障害者1,206人の1年定着率です。
- 求人区分別では、障害者求人64.2%、一般求人・障害開示45.1%、一般求人・障害非開示27.7%という結果が示されています。
- これらは2017年公表・ハローワーク紹介就職者の結果で、採用方法や配慮を変えたときの効果、自社の定着見込みを直接示す数値ではありません。
- 受け入れ体制は、本人と職場で支障となる事情を確認し、必要な配慮を話し合い、採用後も必要に応じて確認します。
更新履歴
- 2026年10月16日定着率の説明を調査の公表値と集計の切り口に合わせて書き直し(49.3%は精神障害者の1年定着率/70.4%は障害種別を合算した障害者求人の値)。採用の入口や配慮を変えたときの効果の断定を外し、合理的配慮の手続を合理的配慮指針に合わせた。題名・説明文も本文に合わせた
出典
本ページの制度に関する記述は、以下の公的機関の資料を確認したうえで作成しています。 制度は改正されることがあるため、実務判断の際は必ず出典元の最新の内容をご確認ください。