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障害者雇用支援サービスの費用相場|見積もりの見方と比較の基準

結論:単一の「相場」を示すことはできません

障害者雇用支援サービス(農園型・サテライトオフィス型など)の費用は、 「1人あたり月額◯円」という単一の相場として示すことができません。

理由は3つあります。

  1. 料金体系が事業者ごとに大きく異なり、公式サイトで金額を明示していない事業者もある
  2. 利用する区画数・人数・契約期間によって単価が変わる契約形態が多い
  3. 「サービス利用料」と「障害者本人の人件費」が別建てになっているため、 提示された金額が何を含んでいるのかがサービスごとに異なる

3つ目が、見積もりを比較するときに最も混乱を招く点です。 金額の大小を比べる前に、まず費用が何で構成されているかを揃える必要があります。

費用は4つの要素に分解できる

料金体系は事業者ごとに違いますが、発生する費用そのものは概ね次の4つに分類できます。 見積書の項目名が違っても、この4つのどこに当たるかを整理すれば比較できます。

1. 初期費用

契約時に一度だけ発生する費用です。区画や座席の整備、設備の準備、 受け入れにあたっての研修などが含まれることがあります。

2. 月額のサービス利用料

農園の区画やサテライトオフィスの座席を利用するための費用と、 常駐する支援スタッフによるサポートの費用です。 多くの場合、この費用が「サービスの料金」として提示されます。

3. 障害者本人の人件費

ここが最も見落とされやすい部分です。

雇用主は「利用企業」です

農園型・サテライトオフィス型のいずれであっても、障害者を雇用するのは利用企業自身です。サービス事業者は就業場所と支援を提供する立場であり、雇用主ではありません。したがって、給与・社会保険料の会社負担分は、サービス利用料とは別に利用企業が負担します。

「月額◯円で障害者雇用が実現できる」という表現を見たときは、それが人件費を含む金額なのか、サービス利用料だけの金額なのかを必ず確認してください。

4. 採用にかかる費用

人材紹介を経由する場合の紹介手数料や、求人媒体の掲載費用です。 サービス利用料に含まれている場合と、別途発生する場合があります。

比較の基準線:何もしなかった場合のコスト

支援サービスの費用が高いか安いかを判断するには、比較の基準が必要です。 その基準になるのが、法定雇用率を満たさなかった場合に発生する障害者雇用納付金です。 こちらは制度上の金額が明確に決まっています。

項目 内容
対象 常用労働者の総数が100人を超える事業主
金額 法定雇用障害者数に不足する1人につき 月額50,000円
年額換算 不足1人あたり 年間600,000円

つまり、常用労働者が100人を超える企業にとっては、 不足1人あたり年間60万円が「何も対応しなかった場合のコスト」になります。 支援サービスの見積もりは、この金額を一つの物差しとして評価できます。

ただし、次の点は必ず押さえておく必要があります。

納付金を払っても雇用義務は消えません

納付金は、障害者雇用に伴う事業主間の経済的な負担を調整するための仕組みです。納付したことによって雇用義務が免除されるわけではありません。未達成の状態が続けば、雇入れ計画の作成命令や適正実施勧告といった行政指導の対象となり、改善が見られない場合には企業名が公表されることがあります。

したがって「納付金を払い続ける」は、コスト比較の選択肢ではあっても、法的な対応の選択肢にはなりません。

なお、常用労働者が100人以下の事業主には納付金の納付義務がありません。 その場合、この基準線は使えないため、 「雇用義務を果たすためにいくらまで払えるか」を自社で設定する必要があります。

実際に、料金は公開されているのか

主要なサービスの公式サイトを実際に確認したところ、 調査した範囲では、料金を公表しているサービスはありませんでした。

各社の公式サイトで確認できた内容(方式・運営会社の法人情報・対応エリア・公表実績・料金の公開状況)は、 障害者雇用支援サービス比較一覧にまとめています。

つまり金額を知るには、必ず複数社から見積もりを取るしかありません。 「相場」を検索しても答えが見つからないのは、そもそも公開されていないためです。

見積もりを取るときの確認項目

複数の事業者から見積もりを取る際、次の項目を揃えて聞くと比較できるようになります。 金額だけを聞いても比較になりません。

確認項目 確認する理由
提示額に人件費が含まれるか 含まれない場合、総額は提示額より大幅に増えます
最低契約期間と中途解約の条件 数年単位の縛りがある場合、総支払額が変わります
契約単位(区画単位か人数単位か) 欠員が出たときに費用が変動するかどうかが決まります
採用が決まらなかった場合の扱い 契約後に人材が確保できないケースへの備えです
支援スタッフの配置人数と勤務時間 支援の実質的な手厚さが決まります
離職した場合の補充対応 定着しなかったときに何が起きるかを事前に確認します
業務内容と作業時間の設定 最低賃金の取り扱いに関わります(後述)

「安さ」だけで選ぶことのリスク

厚生労働省は、農園やサテライトオフィスなどの就業場所を提供する いわゆる「障害者雇用ビジネス」について実態把握を行い、その結果を公表しています。

この調査では、明らかに法令に反する事例は確認されなかった(令和5年4月時点)一方で、 障害者雇用促進法の趣旨に照らして疑義が残る事例がある一方、 能力開発・向上につながっている事例もみられた、とされています。

そのうえで厚生労働省は、望ましい取組のポイントを9項目にまとめたリーフレットを出しています。 このうち、費用と体制を検討する段階で確認しておくべきものを3つ挙げます。 9項目のうちの3つであり、留意事項がこの3つだけということではありません。

  1. 最低賃金の取り扱い(⑥賃金等労働条件) — 本社から離れた場所を就業場所とする場合、 最低賃金の取り扱いに注意が必要であること
  2. 無期転換ルール(④雇用形態・雇用期間) — 無期転換申込権が発生する前に雇止めをすることは、 労働契約法の趣旨に照らして望ましくないこと
  3. 雇用管理責任(⑦勤怠管理・業務管理) — 本社から離れた就業場所においても、 利用企業が雇用主としての雇用管理責任を十分に果たすため、 業務管理体制の確保や、個々人の特性を踏まえた支援担当者の配置に留意すること

これらはいずれも、利用企業側が負う責任についての留意事項です。 サービスを利用しても、雇用主としての責任を外部に移すことはできません。

批判の中身と、在籍型出向を伴う形式の法的な論点は 障害者雇用代行は「やってはいけない」のかで整理しています。

費用を抑えることだけを基準に選ぶと、支援体制が薄いサービスを選んでしまい、 結果として自社が果たすべき雇用管理の負担が増える可能性があります。 金額と支援内容の両方を並べて比較することをおすすめします。

この記事のまとめ

  • 支援サービスの費用に単一の相場は存在しない。調査した範囲では全社が料金非公表だった
  • そのため構成要素に分解し、複数社から見積もりを取って比較するしかない
  • 提示額に障害者本人の人件費が含まれるかを必ず確認する(雇用主は利用企業)
  • 常用労働者100人超なら、不足1人あたり年間60万円の納付金が比較の基準線になる
  • ただし納付金を払っても雇用義務は残るため、納付は法的な解決策にはならない
  • 費用の安さだけで選ばず、支援体制と契約条件も並べて確認する

出典

本ページの制度に関する記述は、以下の公的機関の資料を確認したうえで作成しています。 制度は改正されることがあるため、実務判断の際は必ず出典元の最新の内容をご確認ください。

  1. 障害者雇用納付金制度の概要(独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)/確認日:2026年9月1日)
  2. いわゆる障害者雇用ビジネスに係る実態把握の取組について(厚生労働省/確認日:2026年9月1日)
  3. 障害者が活躍できる職場環境の整備に向けた留意事項(厚生労働省/確認日:2026年9月1日)