合理的配慮の義務化は2つあります|2024年4月の改正と、雇用分野との違い
「2024年4月から義務化」の報道で混乱が起きています
2024年4月、事業者による合理的配慮の提供が義務化されました。この報道を見て、「うちも今から対応が必要なのか」と考えた人事担当者が多いと思います。
結論から言うと、雇用の場面ではすでに義務でした。
合理的配慮の義務は、2つの法律にあります
混同されやすいのですが、別の法律で、対象にしている場面が違います。
| 障害者雇用促進法 | 障害者差別解消法 | |
|---|---|---|
| 対象の場面 | 雇用の場面(自社の従業員・応募者) | 事業者が提供する商品・サービス(顧客等) |
| 義務化の時期 | 平成28年4月 | 令和6年(2024年)4月1日 |
| 改正前の位置づけ | — | 努力義務 |
| 対象となる事業主 | 「事業主」。条文に規模・業種による限定はない(※過重な負担となる場合を除く) | 事業者 |
2024年4月に変わったのは、顧客対応など「雇用以外の場面」です。 自社の従業員に対する合理的配慮は、平成28年4月から義務でした。
雇用分野では、2016年から義務です
障害者雇用促進法は平成28年4月から施行され、雇用分野における障害者差別は禁止、合理的配慮の提供は義務とされています。
改正のポイントは2つです。
| 内容 | 説明 |
|---|---|
| 障害者差別の禁止 | 障害者であることを理由とした、障害のない人との不当な差別的取扱いの禁止 |
| 合理的配慮の提供義務 | 障害者に対する合理的配慮の提供が義務 |
そして重要なのがこの点です。
義務の名宛人は「事業主」で、事業所の規模や業種による限定はありません。
障害者雇用促進法の第36条の2(募集及び採用について)と第36条の3(採用後について)は、 いずれも「事業主は、…必要な措置を講じなければならない」と定めるだけで、 従業員数や業種による例外を置いていません。条文が置いている唯一の例外は 「ただし、事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは、この限りでない」です。
法定雇用率の対象になる企業規模とは関係ありません。 従業員が37.5人未満で雇用義務がない企業でも、障害のある従業員を雇っていれば合理的配慮の義務はあります。
ただし「過重な負担」となる場合は除かれます
義務には例外があります。ただし規模で一律に免れるものではありません
JEEDの資料は、事業主は合理的配慮を「過重な負担にならない範囲で」提供する必要があるとし、「合理的配慮の提供義務は、その措置を講ずることが事業主にとって『過重な負担』となる場合は除かれます」としています。
過重な負担に当たるかどうかは、次の6つの要素を総合的に勘案しながら、個別に判断されます。
- 事業活動への影響の程度
- 実現困難度
- 費用・負担の程度
- 企業の規模
- 企業の財務状況
- 公的支援の有無
「企業の規模」は6要素のうちの1つであって、規模が小さいことだけを理由に義務を免れる仕組みではありません。また「公的支援の有無」が含まれるとおり、助成金やジョブコーチ支援などで負担を軽くできる場合は、その分だけ「過重」と判断されにくくなります。
そして、過重な負担に当たると判断した場合は「その旨と理由を説明」することとされています。判断して終わりではなく、本人への説明までが手続きに含まれます。
合理的配慮の手続きは、次の順に進めるものとされています。
- 申出・確認 — 障害者から事業主に対し、支障となっている事情などを申し出る。 または事業主から障害者に対し、職場で支障となっている事情の有無を確認する
- 話し合い — 事業主と障害者との話し合い
- 確定・説明 — 合理的配慮に関する措置を確定し、その措置の内容・理由を障害者に説明する (過重な負担に当たる場合は、その旨と理由を説明する)
合理的配慮は障害者一人一人の状態や職場の状況などに応じて求められるものが異なり、 多様かつ個別性が高いものとされています。 具体的にどのような措置をとるかは、 障害者と事業主とでよく話し合ったうえで決める必要があります。
なお、差別禁止指針と合理的配慮指針は平成27年に厚生労働省から告示されています。
では、2024年4月に何が変わったのか
事業者による合理的配慮の提供が、努力義務から法的義務になりました。
こちらが対象にしているのは、事業者が商品やサービスを提供する場面です。店舗での接客、窓口対応、施設の利用などが該当します。
義務に反する行為を繰り返し、自主的な改善を期待することが困難な場合などには、国の行政機関から報告を求められたり、助言・指導・勧告を受けたりする場合があるとされています。
中小企業が確認すべきこと
「2024年4月の改正で新たに何かする必要があるか」を判断するために、自社の状況を2つに分けてください。
| 場面 | 根拠となる法律 | いつから義務か |
|---|---|---|
| 従業員・応募者への配慮 | 障害者雇用促進法 | 平成28年4月から |
| 顧客・利用者への配慮 | 障害者差別解消法 | 令和6年4月から |
つまり——
- すでに障害のある方を雇用している企業:雇用の場面の義務は以前からあります。2024年の改正で新たに増えたのは顧客対応の部分です
- お客様と接する事業をしている企業:2024年4月から、こちらが法的義務になりました
- これから障害者雇用を始める企業:採用の段階から、雇用促進法の義務がかかります
雇用率の話とは、別の義務です
法定雇用率を達成していても、合理的配慮の義務は別に残ります
雇用率は「何人雇うか」の話で、合理的配慮は「雇った人にどう対応するか」の話です。達成していても、していなくても、雇用している以上は配慮の義務があります。
逆に、雇用義務の対象となる規模でなくても、障害のある従業員がいれば配慮の義務はあります。ただし、講じる措置が過重な負担となる場合は義務から除かれます。その判断は企業の規模だけで決まるものではなく、6つの要素を総合的に勘案して個別に行われます。
必要な雇用人数は法定雇用障害者数シミュレーターで確認できます。カウントの方法はカウント方法の完全ガイドにまとめています。
実務でどう進めるか
合理的配慮は、決まった型があるわけではありません。本人と話し合って、個別に決めるものです。
進め方は合理的配慮の進め方にまとめています。
判断に迷う事例がある場合は、社労士に相談すべき場面もあわせてご確認ください。就業規則や規程の整備が必要になることがあります。
この記事のまとめ
- 合理的配慮の義務は2つの法律にあり、対象にしている場面が違う
- 雇用の場面は平成28年4月から義務(障害者雇用促進法)
- 2024年4月に義務化されたのは、顧客対応など雇用以外の場面(障害者差別解消法)
- 雇用促進法(第36条の2・第36条の3)は義務の名宛人を「事業主」とだけ定めており、規模・業種による限定はない
- 法定雇用率の対象規模でなくても、雇用していれば配慮の義務はある
- ただし「過重な負担」となる場合は義務から除かれる。判断は事業活動への影響・実現困難度・費用・企業の規模・財務状況・公的支援の有無の6要素を総合的に勘案して個別に行われ、規模だけで一律に決まるものではない
- 過重な負担に当たると判断した場合は、その旨と理由を本人に説明する
- 雇用率は「何人雇うか」、合理的配慮は「どう対応するか」の別の義務
出典
本ページの制度に関する記述は、以下の公的機関の資料を確認したうえで作成しています。 制度は改正されることがあるため、実務判断の際は必ず出典元の最新の内容をご確認ください。