合理的配慮の進め方|建設的対話と「過重な負担」の考え方
「何をすればいいか」の答えは、事前には決まりません
合理的配慮について調べると、事例集は出てきますが、「うちの場合はどうするか」の答えは書かれていません。
理由は制度の作りにあります。合理的配慮は、本人と話し合って個別に決めるものだからです。同じ障害名でも必要な配慮は違い、同じ人でも仕事の内容が変われば変わります。
だからこの記事では、配慮の中身ではなく、決め方の手順を書きます。
進め方の順序
1. 申出を受ける窓口を決めておく
配慮は、原則として本人からの申出が起点になります。したがって、申し出る先が分からない状態を先に解消してください。
| 決めること | ポイント |
|---|---|
| 誰に申し出るか | 直属の上司か、人事か、両方か |
| どう伝えるか | 口頭・書面・メールのどれでもよいことを示す |
| 誰まで共有されるか | これを先に伝えないと、申し出にくくなります |
3つ目が重要です。障害の内容は機微な個人情報です。「誰に共有されるのか分からない」状態では、必要な配慮を言い出せません。
2. 話し合う(建設的対話)
申出を受けたら、本人と話し合います。 ここで大事なのは、次の2点です。
- できない理由から入らない(「前例がない」「他の人と不公平になる」は対話にならない)
- 代替案を出す(申出どおりが難しくても、目的を満たす別の方法がないかを一緒に探す)
「そのままは無理」で終わらせないことが、実務上の分かれ目です
申出どおりの対応が難しい場合でも、何ができるかを一緒に検討するのが建設的対話です。断るだけで終わると、配慮の検討をしたことになりません。
たとえば「通院のため毎週金曜の午後を休みたい」という申出に対し、そのままが難しいなら、時差出勤・在宅勤務・業務の入れ替えなど、目的(通院できること)を満たす別の形を検討します。
3. 決めて、実施する
決まった内容は、本人に伝えて実施します。 そして次の段階へ進みます。
4. 見直す
一度決めて終わりにしないでください。 障害の状態、業務の内容、職場の体制は変わります。
- 業務内容が変わったとき
- 部署や上司が変わったとき
- 本人から見直しの申出があったとき
定期的に確認する機会を作っておくと、問題が大きくなる前に調整できます。
「過重な負担」をどう考えるか
合理的配慮は、負担が重すぎない範囲で行うものとされています。
つまり、あらゆる要望に応える義務ではありません。 ただし——
「過重な負担」は、検討したうえで初めて言えることです
検討せずに「無理です」と答えるのと、検討したうえで難しいと判断するのは、まったく別です。
過重な負担にあたると判断した場合は、その理由を本人に説明し、代替案を検討してください。説明のないまま断ると、対話をしなかったことになります。
判断が難しい場合は、外部の窓口に相談してから決めるほうが安全です(後述)。
記録を残す
残しておくのは「結論」ではなく「経過」です
- いつ、誰から、どんな申出があったか
- どんな代替案を検討したか
- 何を決めたか、その理由
- いつ見直すか
特に「検討した代替案」が重要です。対話をしたことの記録になります。
なお、障害の内容に関する情報は機微な個人情報です。記録の保管場所とアクセスできる人の範囲も、あわせて決めておいてください。
相談できる無料の窓口があります
費用をかける前に、公的な窓口で解決することがあります。
| 窓口 | 相談できること |
|---|---|
| 地域障害者職業センター | 職務の切り出し、ジョブコーチ支援 |
| ハローワーク(雇用指導部門) | 雇用率、求人、助成金の概要 |
| JEED 都道府県支部 | 施設整備・介助等に関する助成金 |
設備の整備や介助者の配置が必要になる場合、助成金の対象になることがあります。 「過重な負担」を判断する前に、使える制度がないかを確認してください。
助成金の全体像は障害者雇用で使える助成金にまとめています。
規程の整備が必要になることがあります
短時間勤務、通院への配慮、在宅勤務などを導入する場合、既存の就業規則でカバーできないことがあります。
個別の運用で対応し続けると、後から「他の人と扱いが違う」という問題が出ます。制度として整えるべき段階かどうかは、社労士に相談すべき場面にまとめています。
定着の話とつながっています
合理的配慮は、義務であると同時に定着のための実務でもあります。合理的配慮の手続では、採用後も必要に応じて定期的に、職場で支障となっている事情の有無を確認するとされています(合理的配慮指針 第3)。
具体的な進め方は精神障害者の定着もあわせてご確認ください。
この記事のまとめ
- 合理的配慮に決まった型はない。本人と話し合って個別に決める
- まず申出の窓口と、共有される範囲を先に決めておく
- 建設的対話は「できない理由から入らない/代替案を出す」
- 過重な負担は、検討したうえで初めて言える。断るなら理由を説明する
- 記録は結論ではなく経過を残す。特に検討した代替案
- 地域障害者職業センターなど無料の窓口がある
- 設備や介助が必要なら、助成金の対象になることがある
- 制度として整える段階なら規程の整備を検討する
更新履歴
- 2026年10月16日定着の節で、精神障害のある方の配慮の有無が継続に直結するとしていた文を、合理的配慮指針 第3の採用後の定期的な確認の記述に置き換えた
出典
本ページの制度に関する記述は、以下の公的機関の資料を確認したうえで作成しています。 制度は改正されることがあるため、実務判断の際は必ず出典元の最新の内容をご確認ください。