障害者雇用を社労士に相談すべき5つの場面|依頼前に確認すること
全部を外注する必要はありません
障害者雇用の実務には、自社でできることと、 専門家に相談したほうが確実なことが混在しています。
まず整理すると、次のようになります。
| 自社でできること | 相談したほうがよいこと |
|---|---|
| 必要な人数の計算 | 助成金の要件判断と申請 |
| 現在のカウントの確認 | 就業規則・規程の整備 |
| 業務の切り出し | 行政指導を受けた後の対応 |
| 支援サービスの比較 | 特例子会社などの制度設計 |
人数の計算はシミュレーターで完結します。 一方、下の4つは判断を誤ると金銭的な損失や法的リスクにつながります。
相談すべき5つの場面
1. 助成金を使いたいとき(最も損失が大きい)
特定求職者雇用開発助成金は、中小企業なら最大240万円が支給されます。 この240万円は「重度障害者等」を短時間労働者以外として雇い入れた場合(3年間)の区分の上限額です(雇入れ日現在の満年齢が原則65歳未満。ただし支給要領0901イの就職促進手当等支給対象者を除く)。 厚生労働省の定義では、「重度障害者等」には精神障害者と45歳以上の身体・知的障害者が含まれます。
そして240万円は上限額であり、支給額は支給対象期(6か月)ごとに、 その期の労働に対して実際に支払った賃金額が上限になります。 そのうえで、金額以前に外せない要件があります。
採用してから相談しても間に合いません
この助成金の主な支給要件は2つです。「(1) ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等(※1)の紹介により雇い入れること」「(2) 雇用保険一般被保険者又は高年齢被保険者として雇い入れ、継続して雇用すること(※2)が確実であると認められること。」身体・知的・精神障害者の区分は、雇入れ日現在の満年齢が原則65歳未満です(支給要領0201イ・0202ロ〜ニ。ただし0901イの就職促進手当等支給対象者を除きます)。65歳以上の場合は高年齢者区分に該当する可能性もあるため、採用前にハローワーク等で対象区分と要件を確認してください。
自社で直接募集して採用すると (1) を満たさず(ハローワーク等がこの助成金の対象労働者として明示した職業紹介による雇入れが条件で、ハローワークのオンライン自主応募も対象外。支給要領 0201イ、事業主向けQ&A 問5)、週20時間未満の働き方では原則として雇用保険の被保険者にならないため (2) を満たしません。応募を受けたあとや選考を始めたあとに紹介を受けても対象外です(事業主向けQ&A 問6、支給要領 0205イ)。民間の職業紹介事業者は、雇用関係給付金の取扱いに係る同意書を提出している事業者に限られます(厚生労働省の案内ページの※1、事業主向けQ&A 問5)。
そして (2) の「(※2)」には、雇い続ける条件が入っています。「対象労働者の年齢が65歳以上に達するまで継続して雇用し、かつ、当該雇用期間が継続して2年以上であることをいいます」。240万円の「重度障害者等」の区分は3年以上です(支給要領 0201イ・0204イ(ハ))。有期で雇うなら、雇用契約書に「自動更新」(本人が望む限り更新できること)と明記した契約であることが条件で、契約期間の長さでは決まらず、2〜3年の契約でも自動更新でなければ対象外です(厚生労働省の案内ページのお知らせ)。また同じお知らせは「雇用契約書に自動更新と記載されている場合であっても、更新の条件として就業規則の解雇要件を超えるものが付されている場合は助成対象となりません」としています。
つまり対象者の雇入れ日の年齢を確認し、採用経路・労働時間・雇用契約の形を決める前に相談する必要があります。良い人が見つかってから調べ始めると、要件を満たさない条件だったという理由だけで、受け取れたはずの助成金がゼロになります。
助成金の全体像は障害者雇用で使える助成金で解説しています。
2. 就業規則や規程を整えるとき
障害者を雇用するにあたって、勤務時間の設定、通院への配慮、 休暇の扱いなどを既存の就業規則でカバーできないことがあります。
短時間勤務や特定短時間勤務を導入する場合、 既存の規程との整合をとる必要があります。
3. 行政指導を受けたとき
雇入れ計画の作成命令や適正実施勧告を受けた場合、 計画の内容そのものが評価の対象になります。
未達成の状態が続くと最終的に企業名が公表されるため、 この段階では自社だけで抱え込まないほうが安全です。 流れは達成できないとどうなるかにまとめています。
4. 障害者雇用状況報告で数え方に迷うとき
重度のダブルカウント、精神障害者の短時間労働者の算定特例、 就労継続支援A型事業所の利用者の除外など、 カウント方法には例外が多くあります。
判断に迷う事例がある場合、 報告を出す前に確認しておくと後の修正を避けられます。
5. 制度設計を検討するとき
特例子会社の設立や、企業グループでの算定特例など、 一定の規模がある企業が検討する仕組みは、要件が細かく定められています。
費用の「相場」が見つからない理由
社労士への依頼を検討して費用を調べても、 はっきりした相場が出てこないと感じた方が多いと思います。
理由は、報酬額が自由化されているためです。
社会保険労務士法の改正により、 社会保険労務士会および連合会の会則の記載事項から、 開業社会保険労務士の受ける報酬に関する規定が削除されました。 厚生労働省の施行通達(平成14年11月27日 発基第1127007号)にその旨が示されており、 この部分は公布日から施行されています。
つまり「社労士の相場は◯円」という数字は、制度上存在しないものです。 金額は事務所ごとに設定されており、 比較するには実際に見積もりを取るしかありません。
見積もりを取るときの確認項目
金額だけを聞いても比較になりません。次を揃えて確認してください。
| 確認項目 | 理由 |
|---|---|
| 顧問契約か、スポット依頼か | 継続費用が発生するかどうかが変わります |
| 助成金の成功報酬の有無と率 | 着手金と成功報酬の両方がかかる場合があります |
| 対応範囲に申請書類の作成が含まれるか | 助言のみか、書類作成まで行うかで負担が違います |
| 障害者雇用の取扱い実績 | 労務全般と障害者雇用では必要な知識が異なります |
| 不支給だった場合の扱い | 助成金が下りなかったときの費用負担を確認します |
| 連絡手段と対応時間 | 期限のある手続きでは応答速度が重要になります |
助成金の「成功報酬◯%」は総額で確認してください
助成金の申請代行では、支給額に対する成功報酬という形が用いられることがあります。中小企業の場合、支給額そのものが大きいため、率が同じでも金額の差は大きくなります。
率だけでなく、実際にいくら支払うことになるのかを金額で確認してください。
相談は無料の窓口もあります
費用をかける前に、公的な窓口で解決することもあります。
| 窓口 | 相談できること |
|---|---|
| ハローワーク(雇用指導部門) | 雇用率の達成、求人、助成金の概要 |
| 地域障害者職業センター | 職務の切り出し、ジョブコーチ支援 |
| JEED 都道府県支部 | 施設整備・介助等に関する助成金 |
厚生労働省のリーフレットは、障害者が活躍できる職場づくりについて 「取組に当たっては、ハローワークが関係機関と連携しながら支援いたします。 お気軽にご相談ください」と案内しています。 まず公的窓口で全体像をつかんでから、 自社で判断が難しい部分だけを専門家に依頼するのが、費用面でも合理的です。
この記事のまとめ
- 人数の計算やカウント確認は自社でできる
- 相談すべきは助成金・規程整備・行政指導・数え方の例外・制度設計の5場面
- 助成金は対象者の雇入れ日の年齢を確認し、採用経路・労働時間・雇用契約の形を決める前に相談しないと要件を外す
- 「継続して雇用(※2)」は65歳到達まで、かつ継続して2年以上(240万円の区分は3年以上)。有期は「自動更新」の契約でないと外れる
- 240万円は「重度障害者等」(精神障害者・45歳以上の身体・知的障害者を含む)の区分の上限額(雇入れ日現在の満年齢が原則65歳未満。ただし支給要領0901イの就職促進手当等支給対象者を除く)で、 支給対象期(6か月)ごとに支払った賃金額が上限になる
- 社労士の報酬は、会則の記載事項から報酬の規定が削除されており、全国一律の基準は存在しない
- 見積もりは金額だけでなく、契約形態・成功報酬・対応範囲を揃えて比較する
- まずハローワークなど無料の公的窓口で全体像をつかむのが合理的
更新履歴
- 2026年10月15日年齢条件の括弧を、240万円の区分を説明する文へ移した
- 2026年10月15日重なっていた年齢条件の注記を短くし、240万円を指す語を直した
- 2026年10月15日特定就職困難者コースの身体・知的・精神障害者の区分は、雇入れ日現在の満年齢が原則65歳未満であること(支給要領0201イ)を書き足し、2つの要件を厚生労働省のページどおり「主な支給要件」とした
出典
本ページの制度に関する記述は、以下の公的機関の資料を確認したうえで作成しています。 制度は改正されることがあるため、実務判断の際は必ず出典元の最新の内容をご確認ください。