障害者雇用が達成できないとどうなる|行政指導から企業名公表までの流れ
結論:罰金はありませんが、放置すると企業名公表まで進みます
法定雇用率を達成できていないこと自体に、罰金や刑事罰は科されません。 しかし「何も起きない」わけではありません。
未達成の状態が続くと、行政指導が段階的に強まり、 最終的には企業名が公表されるところまで進みます。
JEEDの資料は、この流れを次のように説明しています。
障害者雇用の数が法定雇用障害者数を大きく下回っている企業に対して、 ハローワークの所長は障害者の雇入れ計画に関する計画作成命令ができることになっています。 雇入れ計画の実施を怠っているなどの場合は、適正実施勧告がなされ、 それでも従わない場合は、厚生労働大臣がその旨を公表する場合があります。
根拠となるのは、障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)です。
最初に整理すべき2つの誤解
誤解1:「納付金=罰金」ではありません
納付金は罰金ではなく、負担の調整金です
障害者雇用納付金は、障害者雇用に伴う事業主間の経済的な負担を調整するための仕組みです。制裁として科されるものではありません。
したがって、納付したからといって雇用義務を果たしたことにはならず、未達成の状態は続いたままです。行政指導の対象からも外れません。
誤解2:「納付金を払っていないから対象外」ではありません
納付金の納付義務があるのは、常用労働者の総数が100人を超える事業主だけです。 100人以下の事業主に納付義務はありません。
しかし、雇用義務そのものは常用労働者37.5人以上の事業主に生じます。
つまり常用労働者が37.5人以上100人以下の会社は、 「納付金は払わないが、雇用義務はある」という状態です。 お金で解決する選択肢すら存在せず、雇用するしかありません。
| 常用労働者数 | 雇用義務 | 納付金の納付義務 |
|---|---|---|
| 37.5人未満 | なし | なし |
| 37.5人以上100人以下 | あり | なし |
| 100人超 | あり | あり(不足1人につき月額50,000円) |
未達成はどうやって把握されるのか
未達成であることは、事業主自身が毎年提出する 障害者雇用状況報告によって行政に把握されます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠 | 障害者雇用促進法 第43条第7項 |
| 基準日 | 毎年 6月1日現在 |
| 提出先 | 事業所所在地を管轄するハローワーク |
| 提出方法 | e-Gov電子申請/郵送/来所 |
対象となる規模は、その年ごとに確認してください
報告義務の対象範囲は、法定雇用率に連動します。ただし基準日が6月1日であるため、法定雇用率の改正が年度途中に施行された年は、その年の報告が改正前の基準のままになることがあります。
実際、令和8年(2026年)の報告は「従業員40.0人以上」が対象で、提出期限は令和8年7月15日でした。法定雇用率2.7%の施行が同年7月1日であり、基準日の6月1日時点では改正前だったためです。
その年の対象規模と期限は、必ず厚生労働省または管轄労働局の案内でご確認ください。
行政指導の流れ
未達成が把握されると、次の順に指導が進みます。 以下では、法律に基づく3つの措置(作成命令・適正実施勧告・企業名公表)を説明します。
段階1:障害者雇入れ計画の作成命令(ハローワークの所長)
障害者雇用の数が法定雇用障害者数を大きく下回っている企業に対して、 ハローワークの所長が障害者雇入れ計画の作成を命じます。 命令を受けた企業は、計画を作成したうえで実行することが求められます。
本サイトが記載していないこと
作成命令の対象は、JEEDの資料では「障害者雇用の数が法定雇用障害者数を大きく下回っている企業」と示されています。これ以上に具体的な数値基準(不足何人から、実雇用率何%から、といった線引き)は、本サイトでは一次情報で確認できていません。
民間のメディアや社会保険労務士事務所のサイトでは具体的な人数基準が紹介されていますが、本サイトは編集方針により、一次情報で確認できていない数値を制度の内容として記載しません。
自社が該当するかどうかを確認したい場合は、管轄のハローワークにお問い合わせください。確認が取れ次第、本ページを更新します。
段階2:適正実施勧告
雇入れ計画の実施を怠っているなどの場合に、その実施について勧告が行われます。
段階3:企業名公表(厚生労働大臣)
適正実施勧告に従わず、雇用状況に改善が見られない場合、 厚生労働大臣がその旨を公表する場合があります。 公表された企業名は、厚生労働省のウェブサイトに掲載されます。
「特別指導」という段階について
厚生労働省の資料の流れ図は、勧告と公表のあいだに「特別指導」を置いています。しかし「特別指導」は、法律に基づく3つの措置(作成命令・適正実施勧告・公表)とは別の、公表を前提とした指導です。そのため本サイトでは段階として扱っていません。
厚生労働省の報道発表は「障害者の雇用状況に改善が見られない場合には、企業名を公表することを前提とする指導を行った」としています。添付資料は、これを「特別指導」と呼んでいます。
企業名公表の実質的な影響
企業名公表そのものに、金銭的な制裁は伴いません。 しかし実務上の影響は、次のような形で現れます。
- 採用活動への影響 — 求職者が企業名を検索したときに、公表の事実が見つかる状態が続きます
- 取引先・金融機関からの照会 — コンプライアンス体制についての説明を求められる場面が生じます
- 入札参加資格への影響 — 自治体によっては、障害者雇用の状況を入札の評価項目としている場合があります
- 株主・投資家への説明 — 上場企業の場合、非財務情報の開示において説明責任が生じます
金額では測りにくい一方、一度公表されると検索結果から消えにくいという性質があります。
今から取れる対応
1. まず自社の正確な数字を把握する
意外に多いのが、そもそも計算が間違っているケースです。 重度の障害者はダブルカウント、精神障害者の短時間労働者は1人としてカウントするなど、 知らないと実際より少なく数えてしまう規定があります。
数え方はカウント方法のガイドで確認できます。 自社の数字は法定雇用障害者数シミュレーターで計算できます。
2. 既存従業員の状況を把握する
すでに在籍している従業員が障害者手帳を取得している場合、 本人の同意を得たうえで、実雇用率に算入できることがあります。 新規採用だけが選択肢ではありません。
★手帳の把握には、厚生労働省が定めた手順があります
障害者手帳の情報は要配慮個人情報です。厚生労働省の「プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドライン」が手順を定めており、採用後に把握・確認する場合は「雇用する労働者全員に対して、メールの送信や書類の配布等画一的な手段で申告を呼びかけることを原則とします」とされています。
同ガイドラインは、呼びかけ方法として不適切な事例に「障害者と思われる労働者のいる部署に対してのみチラシを配布する」を挙げています。特定の従業員に個別に尋ねる形は原則として取れません。
このガイドラインは平成17年11月に策定された資料です。呼びかけの手順・不適切な事例・照会の根拠は現在も運用されているものですが、同じPDFに載っている制度の説明(対象企業規模・カウント方法)は策定当時のもので、「障害者雇用状況の報告は従業員56人以上」「納付金の申告は301人以上」などと書かれています。現行の数値は本サイトの記載(37.5人以上・100人超)をご確認ください。
個人を特定して照会できるのは、本人が公的制度や社内制度の活用を求めて自発的に提供した情報を根拠とする場合に限られます。上司や同僚の受けた印象・職場における風評、健康診断の結果などは、照会の根拠として不適切と明示されています。
呼びかけの際は、回答が業務命令ではないこと、利用目的(障害者雇用状況の報告、納付金の申告、調整金・報奨金の申請)などを本人に明示することとされています。
3. 不足を埋める手段を並べて比較する
不足がある場合の選択肢は、大きく次の3つです。
| 選択肢 | 向いている状況 |
|---|---|
| 自社で直接採用する | 任せられる業務があり、受け入れ体制を用意できる |
| 支援サービスを利用する | 業務の切り出しが難しい、社内に支援の担い手がいない |
| 特例子会社を設立する | 一定の規模があり、中長期的に人数を増やす見通しがある |
費用の考え方は支援サービスの費用相場、 方式の違いは農園型とサテライトオフィス型の比較で整理しています。
4. 相談先を確保する
障害者雇用状況報告の提出先は、事業所所在地を管轄するハローワークの雇用指導部門です。 厚生労働省のリーフレットは、障害者が活躍できる職場づくりの取組について 「取組に当たっては、ハローワークが関係機関と連携しながら支援いたします。 お気軽にご相談ください」と案内しています。
この記事のまとめ
- 未達成そのものに罰金はないが、放置すると企業名公表まで進む
- 納付金は罰金ではない。払っても雇用義務は残り、行政指導の対象からも外れない
- 常用労働者37.5人以上100人以下の会社は、納付金を払う選択肢すらない
- 未達成は毎年6月1日基準の障害者雇用状況報告で把握される
- 法律に基づく措置は 計画作成命令(ハローワークの所長)→ 適正実施勧告 → 企業名公表(厚生労働大臣) の3つ。勧告と公表のあいだに、公表を前提とした「特別指導」がある
- 在籍者の手帳の把握は、全従業員への一律の呼びかけが原則(プライバシー配慮ガイドライン)
- まずは自社の数字が正確かを確認するところから始める
更新履歴
- 2026年10月15日「特別指導」を民間の解説だけのものと読める記述を厚生労働省の資料の流れ図に直し、まとめを法律に基づく3つの措置と特別指導に分けた
- 2026年10月15日「一次情報で確認できる段階は3つ」とした記述を法律に基づく3つの措置の説明に限定し、報道発表の添付資料が公表を前提とした指導を「特別指導」と呼んでいることを書いた
- 2026年10月13日一次情報に「特別指導」という語はないとした記述を改め、法律に基づく3つの措置とは別の、公表を前提とした指導と書き分けた。JEEDの出典名をリンク先の資料名に直した
出典
本ページの制度に関する記述は、以下の公的機関の資料を確認したうえで作成しています。 制度は改正されることがあるため、実務判断の際は必ず出典元の最新の内容をご確認ください。