障害者雇用は何から始めるか|担当になった人のための進め方
順番を間違えると損をします
障害者雇用の担当になったとき、多くの方は「まず求人を出そう」と考えます。 しかし、この順番だと助成金が使えなくなることがあります。
特定求職者雇用開発助成金には 「ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等(※1)の紹介により雇い入れること」という要件があり、 自社で直接募集して採用した方は対象外になるためです(ハローワーク等がこの助成金の対象労働者として明示した職業紹介による雇入れが条件で、ハローワークのオンライン自主応募も対象外。支給要領 0201イ、事業主向けQ&A 問5)。応募を受けたあとや選考を始めたあとに紹介を受けても対象外です(事業主向けQ&A 問6、支給要領 0205イ)。民間の職業紹介事業者は、雇用関係給付金の取扱いに係る同意書を提出している事業者に限られます(厚生労働省の案内ページの※1、事業主向けQ&A 問5)。 身体・知的・精神障害者の区分は、雇入れ日現在の満年齢が原則65歳未満です(支給要領0201イ・0202ロ〜ニ。ただし0901イの就職促進手当等支給対象者を除きます)。65歳以上の場合は高年齢者区分に該当する可能性もあるため、採用前にハローワーク等で対象区分と要件を確認してください。さらに雇用保険の被保険者であることと、65歳到達まで、かつ継続して2年以上(短時間労働者以外の重度障害者等は3年以上)の 雇用が確実であると認められること(有期なら雇用契約書に「自動更新」の明記が必要)も要件になっています。
そのため、進め方には適切な順番があります。この記事はその全体像です。
全体の流れ
STEP 1 自社が対象か、何人必要かを確認する
STEP 2 現在のカウントを正確に数え直す
STEP 3 不足を埋める手段を決める
STEP 4 任せる業務を切り出す
STEP 5 採用経路を決める(★助成金の分かれ目)
STEP 6 受け入れ体制を用意して迎える
STEP 1:自社が対象か、何人必要かを確認する
法定雇用率が2.7%に引き上げられ、 常用労働者37.5人以上の事業主が障害者を1人以上雇用する対象になりました。
まずここを確認します。従業員数を入力するだけで判定できます。
法定雇用障害者数シミュレーター 短時間労働者の0.5カウントにも対応しています
対象外だった場合も、あと何人増えると対象になるかが表示されます。 採用計画がある会社は、ここを把握しておくと後で慌てずに済みます。
STEP 2:現在のカウントを正確に数え直す
意外に多いのが、すでに要件を満たしているのに気づいていないケースです。
- 重度の身体・知的障害者をフルタイムで雇用している場合、1人を2人として数えます
- 精神障害者の短時間労働者は、算定特例により0.5人ではなく1人として数えます
- 週10時間以上20時間未満の労働者も、区分によっては0.5人として算定できます
これを知らずに数えると、実際より少なく計算してしまいます。
在籍中の従業員が障害者手帳を取得しているケースもあります。 本人の同意を得たうえで確認できれば、新規採用が不要になることもあります。
★「心当たりのある人に個別に聞く」はできません
厚生労働省の「プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドライン」は、採用後に障害者を把握・確認する場合、「雇用する労働者全員に対して、メールの送信や書類の配布等画一的な手段で申告を呼びかけることを原則とします」としています。
不適切な事例として「障害者と思われる労働者のいる部署に対してのみチラシを配布する」が挙げられています。個人を特定して照会できるのは、本人が公的制度や社内制度の活用を求めて自発的に情報を提供した場合などに限られ、上司や同僚の印象・職場の風評・健康診断の結果は根拠として不適切と明示されています。
「新規採用が不要になるかもしれない」という動機から個別に尋ねる方向に進むと、ここを踏み外します。呼びかけの手順は必ずガイドラインで確認してください。
このガイドラインは平成17年11月に策定された資料です。呼びかけの手順・不適切な事例・照会の根拠は現在も運用されているものですが、同じPDFに載っている制度の説明(対象企業規模・カウント方法)は策定当時のもので、「障害者雇用状況の報告は従業員56人以上」「納付金の申告は301人以上」などと書かれています。現行の数値は本サイトの記載(37.5人以上・100人超)をご確認ください。
STEP 3:不足を埋める手段を決める
不足がある場合、選択肢は大きく3つです。
| 手段 | 向いている状況 |
|---|---|
| 自社で直接採用する | 任せられる業務があり、受け入れ体制を用意できる |
| 支援サービスを利用する | 業務の切り出しが難しい、社内に支援の担い手がいない |
| 特例子会社を設立する | 一定の規模があり、中長期で人数を増やす見通しがある |
「納付金を払う」は選択肢になりません
常用労働者100人超の事業主には、不足1人につき月額50,000円の納付金が発生します。しかし納付しても雇用義務は消えません。未達成が続けば行政指導の対象となり、最終的には企業名が公表されます。
また常用労働者37.5人以上100人以下の会社には納付義務そのものがないため、お金で解決する選択肢が存在しません。
詳しくは達成できないとどうなるかをご覧ください。
コストの考え方は支援サービスの費用相場、 実際のサービスは支援サービス比較一覧で確認できます。
STEP 4:任せる業務を切り出す
自社採用を選ぶ場合、ここが最大の山場です。 「任せる仕事が思いつかない」という壁は、 通常の採用と同じ探し方をしていることが原因であることが多いです。
JEEDは職務を創出する方法として3つのモデルを示しています。
- 切り出し・再構成モデル — 各部署の定型作業を集めて一つの職務に組み直す
- 積み上げモデル — 限定的な職務から始め、段階的に幅を広げる
- 特化モデル — 本人の得意分野に着目して職務を選び出す
STEP 5:採用経路を決める(★助成金の分かれ目)
ここが順番の要です
求人を出す前に、どの経路で採用するかを決めてください。特定求職者雇用開発助成金の主な支給要件は2つです。「(1) ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等(※1)の紹介により雇い入れること」「(2) 雇用保険一般被保険者又は高年齢被保険者として雇い入れ、継続して雇用すること(※2)が確実であると認められること。」(1) は、ハローワーク等がこの助成金の対象労働者として明示した職業紹介による雇入れが条件で、ハローワークのオンライン自主応募も対象外です(支給要領 0201イ、事業主向けQ&A 問5)。
(2) があるため、週20時間未満の働き方はこの助成金の対象になりません(原則として雇用保険の被保険者にならないため)。カウント上は算定できても、助成金は別の制度です。
さらに (2) の「(※2)」には、雇い続ける条件が入っています。「対象労働者の年齢が65歳以上に達するまで継続して雇用し、かつ、当該雇用期間が継続して2年以上であることをいいます」。有期で雇うなら、雇用契約書に「自動更新」(本人が望む限り更新できること)と明記した契約であることが条件です(厚生労働省の案内ページのお知らせ)。契約期間の長さでは決まらず、2〜3年の契約でも自動更新でなければ対象外です。また同じお知らせは「雇用契約書に自動更新と記載されている場合であっても、更新の条件として就業規則の解雇要件を超えるものが付されている場合は助成対象となりません」としています。しかも「重度障害者等」(=240万円・3年間の区分)は3年以上です。決める前に確認すべきは対象者の雇入れ日の年齢・採用経路・労働時間・雇用契約の形の4つです。
中小企業の支給額は最大240万円(「重度障害者等」を短時間労働者以外として雇い入れた場合・3年間)で、中小企業以外の2倍以上に設定されています。厚生労働省の定義では、「重度障害者等」には精神障害者と45歳以上の身体・知的障害者が含まれます。身体・知的・精神障害者の区分は、雇入れ日現在の満年齢が原則65歳未満です(支給要領0201イ。ただし0901イの就職促進手当等支給対象者を除きます)。
ただし240万円は上限額です。支給額は支給対象期(6か月)ごとに、その期の労働に対して支払った賃金額が上限になります。要件を外して採用した場合に失われるのは「満額の240万円」ではなく、実際に受け取れたはずの額です。金額の前提は障害者雇用で使える助成金で確認してください。
まずハローワークの雇用指導部門に相談し、 自社が使える助成金と、それに合う採用経路を確認してください。
STEP 6:受け入れ体制を用意して迎える
厚生労働省の合理的配慮指針では、雇入れ時までに労働者が障害者であることを把握している場合、雇入れ時までに職場で支障となる事情の有無を確認するとしています。 合理的配慮が必要な場合は、本人と話し合い、その意向を尊重し、過重な負担にならない範囲で講ずる措置を検討して、決めた内容を本人に伝えます。
精神障害のある労働者への採用後の対応例として、指針には次の内容などが示されています。
- 業務指導や相談の担当者を定める。
- 業務の優先順位や目標を明確にし、指示を一つずつ出す。
- 作業手順を分かりやすく示したマニュアルを用意する。
- 出退勤時刻・休暇・休憩について、通院・体調に配慮する。
- 本人の状況を見ながら業務量を調整する。
これらは例示であり、本人の障害の状態や職場の状況に応じて検討するものです。 なお、障害者である労働者からの相談に応じる窓口をあらかじめ定めて周知すること(担当者・部署を定める、外部の機関に委託するなど)は、指針の第6で事業主が講じなければならない措置とされています(厚生労働省のQ&A A4-5-2では、既存の相談窓口を活用してもよいとしています)。 採用後も、必要に応じて定期的に、職場で支障となる事情の有無を確認します。
定着率のデータは、自社の予測値とは分けて読みます
JEEDの調査研究報告書No.137(2017年4月公表)では、一般企業に就職した精神障害者1,206人の就職後1年時点の定着率が49.3%と報告されています。 対象は、2015年7月1日から8月31日までにハローワークの専門援助部門の紹介で就職した人です。
同じ1,206人を求人の区分で分けた結果が、次の表です。
| 就職した求人の区分 | 就職後1年時点 | 人数 |
|---|---|---|
| 障害者求人 | 64.2% | 618人 |
| 一般求人・障害を開示 | 45.1% | 195人 |
| 一般求人・障害を非開示 | 27.7% | 393人 |
※ 図表1-8-1。 就労継続支援A型を除いた一般企業への就職者のうち、精神障害者が対象です。
この調査では就職先企業の定着への配慮や工夫の有無を把握していないため、この表から特定の受け入れ方法の効果を断定することはできません。 64.2%も、自社の定着見込みとしてそのまま使う数値にはしないでください。
調査の読み方は精神障害者の職場定着率|公的調査の49.3%と、求人区分別の数字の読み方で整理しています。
年間の実務スケジュール
障害者雇用には、毎年決まった時期に発生する手続きがあります。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 毎年6月1日 | 障害者雇用状況報告の基準日(この日の状況を報告します) |
| 6〜7月 | 障害者雇用状況報告をハローワークへ提出(根拠:障害者雇用促進法第43条第7項) |
| 年度中 | 助成金の支給申請(支給対象期ごと) |
報告の対象となる企業規模と提出期限は年によって案内が異なるため、 その年の厚生労働省または管轄労働局の案内で必ずご確認ください。
よくある失敗
| 失敗 | 何が起きるか |
|---|---|
| 求人を出してから助成金を調べる | 採用経路の要件を満たさず、対象外になることがある |
| カウント方法を確認せずに人数を出す | 重度のダブルカウントを見落とし、不要な採用や納付をする |
| 受け入れ部署に事前相談していない | 現場の協力が得られず、入社後に立ち行かなくなる |
| 相談窓口を定めて周知していない | 指針の第6で講じなければならないとされる措置を欠く |
| 納付金を払えば済むと考える | 義務は残り、行政指導から企業名公表へ進む |
相談先
自社だけで抱え込む必要はありません。次の窓口が利用できます。
- ハローワーク(雇用指導部門) — 雇用率の達成に向けた相談、求人、助成金
- 地域障害者職業センター — 職務の切り出し、ジョブコーチ支援
- JEED 都道府県支部 — 施設整備・介助等に関する助成金
- 社会保険労務士 — 助成金の要件確認、就業規則の整備
厚生労働省のリーフレットは、障害者が活躍できる職場づくりの取組について 「取組に当たっては、ハローワークが関係機関と連携しながら支援いたします。 お気軽にご相談ください」と案内しています。
この記事のまとめ
- 順番が重要。求人を出す前に、対象者の雇入れ日の年齢を確認し、採用経路・労働時間・雇用契約の形の3つを決めないと助成金を失う
- まず人数を計算し、次にカウントを数え直す
- 不足を埋める手段は3つ。納付金は選択肢にならない
- 「任せる仕事がない」は職務の切り出しで越えられることが多い
- 受け入れ体制は、本人と職場で支障となる事情を確認し、必要な配慮を話し合い、採用後も必要に応じて確認します。定着率の調査結果を、そのまま自社の定着見込みにしないでください。
- 毎年6月1日が報告の基準日
更新履歴
- 2026年10月16日STEP 6 の定着率の説明を調査の対象と限界に合わせて書き直し(64.2%を自社の見込みにしない・受け入れ方法の効果を断定しない)、受け入れの進め方を、合理的配慮指針の手続(確認・話し合い)と別表の対応例に置き換えた。まとめとよくある失敗の因果の言い切りも直した
- 2026年10月15日採用経路の注意書きにあった年齢条件の注記を削った(同じ枠の後の段落に同じ条件がある)
- 2026年10月15日まとめの「順番が重要」に、対象者の雇入れ日の年齢の確認を入れた。特定短時間労働者を週10時間以上20時間未満と書き、重なっていた年齢条件の注記を短くした
- 2026年10月15日特定就職困難者コースの身体・知的・精神障害者の区分は、雇入れ日現在の満年齢が原則65歳未満であること(支給要領0201イ)を書き足し、2つの要件を厚生労働省のページどおり「主な支給要件」とした
出典
本ページの制度に関する記述は、以下の公的機関の資料を確認したうえで作成しています。 制度は改正されることがあるため、実務判断の際は必ず出典元の最新の内容をご確認ください。
- 令和8年7月より障害者の法定雇用率が2.7%に引き上げられます
- 障害者雇用状況報告書及び記入要領等
- 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
- 雇用関係助成金支給要領 4 特定求職者雇用開発助成金 (1) 特定就職困難者コース(令和8年4月1日)
- 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)事業主向けQ&A(令和7年4月1日公表)
- 2(3)職務内容の選定(はじめての障害者雇用~事業主のためのQ&A~)
- プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドライン(平成17年11月策定)
- 調査研究報告書 No.137 サマリー
- 調査研究報告書 No.137 本文
- 障害者が活躍できる職場環境の整備に向けた留意事項
- 合理的配慮指針(平成27年厚生労働省告示第117号)
- 障害者雇用促進法に基づく障害者差別禁止・合理的配慮に関するQ&A【第二版】